[榊原英資の言葉]

2009-07-06

【金融・経済 日本再生!】

そもそも銀行の不良債権処理が遅れた最大の原因は、「不動産価格が上がればすべてが解決する」と銀行も思ったし、大蔵省もそう思っていたことにある。


まさにアメリカの思惑通りに日本が動いてしまった部分があった。たとえば、株主代表訴訟を簡単にするような、法律の改正をしてしまった。あれは明らかに間違いだった。少なくともアメリカは、そう簡単には株主が企業を訴えられないようになっている。少なくとも、後から株を買って訴える、などということはできない。だけど、今の日本は後から株を買っても訴えられるようになってしまった。そういうおかしなことを、構造改革の名のもとにやってしまった。


大きな流れとしては、資本の過剰な流動性は今後少なくなっていくと思うが、ただ一つ注意しておかなければならないのは、情報通信革命はけっして後戻りしないということである。情報通信革命の更なる進展を前提としながら、管理あるいは規制を含めてどう新しい金融のシステムをつくっていくかが問題の焦点となる。


ものごとは大体が白でも黒でもないグレーであることが多い。その中を戦略的に泳いでいくというのが国の運営のしかただが、そういうことが世間的にだんだん通じなくなってきたことも、一種の幼稚化現象だといえなくもない。

[ 榊原 英資 ]