[久保利英明の言葉]

2009-06-06

【コーポレート・ガバナンス改革】

会社は法の下に存在するので、違法行為をしないのは当たり前で、コンプライアンスは会社である以上最も基本的なことである。


東京スタイル事件でのM&Aコンサルティング社長の村上世彰氏は、残念だけれどもコーポレート・ガバナンスの旗手からファンドマネージャーに成り下がったのではないだろうか。少なくとも、村上氏が東京スタイル戦争をあのような形で仕掛けたのは失敗だったと思う。それは村上氏のためにもよくなかったし、コーポレート・ガバナンスという言葉のためにもよくなかったのではないだろうか。


株主価値を上げることは、短期的な売り買いをする株主のためではなく、長期的にこの会社とともに育っていきたい、伸びていきたいと思っている投資家、この会社を大事なものといえる株主のみる目を指標にしながら、企業の収益力を増進させるような経営をすることなのだ。


従業員をいじめてリストラし、低賃金で労働条件も悪いところに優秀な従業員が居つくわけがない。また、優越的な地位に基づいて独禁法違反の取引をしている会社と喜んで取引をする会社があるわけがない。結局株主のことを考えれば、従業員や取引先のこともきちんと考えないと、誰もいなくなって損をするのは株主なのである。つまり、ステークホルダー中心主義などといわなくても、正しいあるべき姿の投資家をイメージし、シェアホルダーを重視すればコーポレート・ガバナンスは確立できるのである。


根本的なところは、村上氏は長期保有をして、年金基金のように本当に投資をしていくつもりがあったのだろうかということです。彼は「我々はファンドを預かっている。だから一定の利益を上げないといけない」といっているのですが、その利益は長期保有から生まれる利益ではいけないのだろうか。短期の売り買いだったらウォール・ストリート・ルールと同じだから売ったり買ったりは大いに結構ですが、そのときにコーポレート・ガバナンスといわないで欲しい。

[ 久保利 英明 ]