[石井淳蔵の言葉]

2008-12-23

【ブランド 価値の創造】

たっぷりと広告宣伝費をかけ十分に名を知られたブランドでなければ、スーパーやコンビニの店頭に並ぶことさえできない。優れた商品をつくるだけでは、市場に参加することさえかなわない時代なのである。


商品の物理的寿命はその大半が人間の寿命より短いが、それがブランドという衣装をまとえば、人間の寿命よりはるかに長く生き続けるのである。その意味で、ブランドは商品以上に資産としての条件を備えている。


ブランドとは、九鬼周造のいう「日本の粋」や山本七平のいう「場の空気」の概念に似て、客観的な存在として存在するというよりも、その存在を了解しあうようなたぐいの存在のようにも思える。


その場その場のアドホックな作業ではなく、「ブランドとして成長させたい」とする企業側の長期にわたる鮮明な意図が不可欠なのだ。


だれかは知らないが、「プリッツ・チョコ」とはせずに「ポッキー」という名前をつけようといったその一言が今あるグリコを支えている、といっても過言ではない。


企業側に、「他のブランドと区別されたブランドとして育てる」という意志なしに、そしてその意志の下にブランドとして焦点の合ったマーケティングを行うことなしに、ブランドが生まれることはありえない。


まさに、偶有的でありかつ他に代わりうるものがないのがブランドなのである。

[ 石井 淳蔵 ]