[岩井克人の言葉]

2009-1-23

【二十一世紀の資本主義論】

理論の正しさは経験からは演繹できない。いや、経験から演繹できるような理論は、真の理論とはなりえない。真の理論とは日常の経験と対立し、世の常識を逆なでする。それだからこそ、これまで見えなかった真理をひとびとの前に照らしだす


理論の批判は、理論によってしか可能でない。そしてそれは、それまでの理論が「思考せずに済ませていたこと」を思考することによってのみ可能なのである


日常経験と対立し、世の常識を逆なでするというその理論のはたらきが、真理を照らしだすよりも、真理をおおい隠しはじめるとき、それはその理論が、真の理論からドグマに転落したときである。そしてそのとき、その理論に内在していた盲点と限界とが同時に露呈されることになる

 

2008-11-18

【二十一世紀の資本主義論】

差異から利潤を創りだす―――これが、資本主義の基本原理である。


基軸通貨の問題にたいして、政治における覇権(hegemony)理論や勢力均衡(balance of power)理論を応用することほど愚かなことはない。ドルが基軸通貨であるのは、それが世界中の多くのひとびとに受け入れられてるから世界中の多くのひとびとに受け入れられているという、一種の自己循環論法の結果にすぎない。それは、そのドルを発行しているアメリカという国の経済支配力とはかならずしも一対一対応していないのである。


基軸通貨体制とは、どの通貨であれ、ひとつの通貨が基軸通貨の地位を独占してはじめて安定(balance)するのである。複数の基軸通貨が競合している状態とは、言葉の真の意味での不安定(unbalanced)な状態であり、複数の基軸通貨の勢力均衡などありえない。

[ 岩井 克人 ]