[黒川紀章の言葉]

2008-12-08

【建築論Ⅱ】

モダニズムと手を携えつつ逃走すること。モダニズムを否定しつつ包含すること。二項対立から逃走する方法は、これしかない。


本来建築とは、人間社会の諸力としてのさまざまな欲望の多種多様な絡み合いそのものではないか。空間を性格づけ、文節化し、整理し、そして構造化したとしても、実はそのモデルとしての構造が現実の社会、すなわち<非知>の世界に投入されるやいなや、多義的で、両義的な絡み合いでしかなくなる。居間は<居る空間>だけにとどまることはないし、寝室は<寝る空間>であるにとどまることはない。


建築をモダニズムとポストモダニズムの二項対立として論ずる方法は、モダニズムの欠陥を暴露するのにはある程度有効な武器だったが、あまりにも長くこの二分法に捕われていると、自ら足を取られてしまうことになるだろう。

[ 黒川 紀章 ]